こちらの離島 第一弾「奄美大島」

都市の喧騒に包まれて日常生活を送る旅行者にとって、魅力的な滞在先である「離島」。旅の途中で訪れる島々は、観光スポットとなっているのと同時に、地元の方々の生活の場であり、時には希少な動植物の重要な生息地でもあり、さらには領海や排他的経済水域の起点としての機能を担っていることもあります。海という地理的な障壁に隔てられ、1つのシステムとして長い歴史を刻んできた離島は、都市という存在の本来の姿、そして未来への示唆を表しているのかもしれません。新シリーズ「こちらの離島」では、そんな離島にスポットを当てていきます。

離島
日本における離島とは、国土交通省の定義によれば「北海道・本州・四国・九州・沖縄本島」を除く6,847の島を指す。うち有人島は417、無人島は6,430である。

 

<奄美大島ってどんな島?>

鹿児島の南に位置する奄美群島の中で最大の島。面積は712.35㎢と、日本の離島の中では4番目の広さです。行政区域としては、奄美市・龍郷町・大和村・宇検村・瀬戸内町の5市町村があり、人口は約6万6千人となっています。島の北東部には奄美空港があり、東京・大阪・鹿児島などの都市から日本航空とバニラエアが就航しています。奄美市の中心地近くには名瀬新港があり、鹿児島~那覇を結ぶフェリーなどが就航しています。(2018年3月現在)

鹿児島から那覇を結ぶ鹿児島航路のフェリー。名瀬新港では貨物の積み下ろしの様子も見ることができます。

 

<島内の交通手段は?>

ほとんどの観光客はレンタカーを借りて移動しているようです。空港のターミナルの前には10社ほどのレンタカー会社の営業所が軒を連ねており、その中には名瀬での乗り捨てが可能なものもあります。島の北部・笠利町地区から南部・古仁屋地区まで通して運転しても2時間半かからないくらいとドライブにはちょうどよい広さであり、信号や交通量も少なく道幅も広いという運転しやすい環境なので、ぜひとも車を使って時空間プリズムを拡大したいところですね。ただ、わたしはペーパードライバー歴3年半なので今回は遠慮しておきます。わたしも同じだ、という顔をしているそこのあなた。乗って残そう公共交通、ということで公共交通機関をご紹介しますのでご安心を。

路線バスとして「しまバス」があり、島内の主要な地域をカバーしています。夕方の奄美空港に降り立ったわたしたちは、空港の2階にある、九州で圧倒的な強さを誇るファミリーレストラン「ジョイフル」で腹ごしらえをしたあと早速バス停を探しました。

奄美空港2階のジョイフル。この店舗限定のフルーツジュースもあります。

小さなターミナルのため、正面のドアを出ると目の前にバス乗り場があります。なんだ簡単じゃないか、と思いながら目的のバスの時刻に来たバスに恐る恐る乗り込みます。バスの行き先にはとてもローカルな地名が表示されており、何行きに乗れば途中で目的地を通るのかを判断するのが難しくなっています。事前によく調べてから乗らないと、わたしたちのように逆方向のバスに乗ってしまいますので気を付けましょう。(逆方向のバスが17:25と17:28に来るというトラップ?に引っ掛かりました。)

路線バスを使うと、空港から名瀬の市街地まではおよそ1時間、料金は1100円です。また逆方向のバスに乗れば笠利地区のリゾートホテルやダイビングスポット、そして雄大な太平洋が臨める「あやまる岬観光公園」などに向かうことができます。わざと逆方向に乗ってみるのも手かもしれませんよ?(夕方のバスで途中下車すると、親切な運転手さんが「帰りの終バスに気を付けてくださいね」と声をかけてくれます。)ただし、路線バスは運行頻度が高くないので、宿泊施設やダイビングショップが送迎をしてくれないか事前に聞いておくのも手でしょう。

島の北部・笠利地区にある「あやまる岬観光公園」からの眺め。

<どんな自然があるの?>

サーファーやダイバーに人気の奄美大島ですが、海だけではなく島の大半を占める山地には固有種を含むたくさんの希少な動植物が生息しています。日本政府は「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」を世界自然遺産としてUNESCOに推薦しており、2018年夏の世界遺産委員会で審査され、登録される見込みです。ちなみに、2018年3月に退官される東京大学都市工学科の西村幸夫教授が委員長を務める日本イコモス国内委員会は文化遺産を担当しているので、奄美・沖縄のような自然遺産の審査は別の機関が行っているようです。

奄美大島中部の山地を中心に、国指定の特別天然記念物であるアマミノクロウサギや、天然記念物であるルリカケス、オオトラツグミ、ケナガネズミなどが見られます。また、「世界一美しいカエル」と呼ばれるアマミイシカワガエルも生息しています。認定ネイチャーガイドの案内で貴重な動物たちを見たり、鳴き声を聞いたりすることができました。

特別天然記念物アマミノクロウサギ(の標本)

アマミイシカワガエル(こちらは本物)

<自然はどうやって守られているの?>

奄美大島では、1970年代ごろに森林の伐採が進み、独自の生態系が大きく脅かされました。また同じころ、ハブを駆除する目的で導入されたマングースがハブではなく島の固有種であるアマミノクロウサギなどを捕食してしまうことが明らかになったことからマングースを捕獲する専門チームが組まれたり、調査の結果道路上で車に轢かれてしまう動物が多いことから交通安全の啓発活動が行われたりと、奄美の豊かな自然を取り戻し、さらに豊かにするための様々な活動が行われるようになりました。環境省が大和村に設置している奄美野生生物保護センターでは、奄美の自然や動物たちについて学ぶことができます。名瀬の市街地から車で30分程度、入館も無料ですので、みなさんもぜひ足を伸ばしてみてください。

環境省の野生生物保護センターは大和村にあります。

奄美群島が2017年3月に国立公園に指定されたことから、島内の一部の道路では一般車両の通行が禁止されることになります。また、通行禁止とはなっていない道でも道路上には小さな動物たちが出てきていることがあり、注意して運転しているつもりでも轢いてしまうことが考えられます。不用意に細い道や暗い道に入って自然や星空を観察しようとするのは絶対にやめましょう。

集落の内部でも希少な動植物が見られる奄美大島。農業や人間への深刻な被害が出たことからかつては完全な駆除が目指されていたハブも、最近では人との住み分け・共生が目標とされるようになってきたといいます。わたしたちの社会全体を支える大きな「エコシステム」が都市部においても健全に機能するためにはどうしたらよいのでしょうか。離島を訪れることが、都市について改めて考えるよい機会にもなるかもしれませんね。