こちらの都市紹介 第一弾 ヘルシンキの公共交通

今回はフィンランドのヘルシンキ都市圏の公共交通機関について見ていきます。

 

フィンランドのヘルシンキ都市圏の公共交通機関は、近郊列車、バス、トラム、地下鉄、フェリーの5つがあります。これらはHSL(フィンランド語でヘルシンキ地域交通局の意)が統括して運営しています。路線やダイヤまではHSLが決定し、一部の運行に関しては、HSLが他の会社に委託して運行するという形です。このHSLという組織はヘルシンキ周辺の地方自治体の集合体(“a joint local authority”)です。

 

筆者は、ヘルシンキの中心部からヘルシンキヴァンダー空港を含む範囲の2日券を買い、5つの交通機関に乗車、乗船しました。ヘルシンキ周辺を観光するには、この券の範囲(Region two-zone)で十分でしょう。1日で14€、2日で21€、以降1日増えるごとに7€増え、7日券まであります。これらは、券売機やコンビニなどで購入できます。

それぞれの交通機関

まずは近郊列車に乗ってみましょう。空港を通る路線はテニスのラケットのような形でひかれ、輪っか部分に空港の駅があり、持ち手の端にヘルシンキの中央駅があるような形です。空港からはどちらの方面の列車に乗ってもヘルシンキ中央駅に着くようになっています。平日の昼間であれば10分に1本あります。

来る列車は紫か青の車体。席が多めに取られ、さらにベビーカー、車椅子用のスペースも大きめに取られ、4両のうちの1両の半分ほどが充てられています。ベビーカーや車いすの方が来ると、ヘルシンキの方々はすぐに席を立ち、場所を譲ります。

次にバスです。バスの車体は青。日本の路線番号と異なり、100の位が同じ番号は近くを通る路線で、大体どこを通る路線であるかが、住民であればわかるような工夫がなされています。幹線であれば、ラッシュ時には2分に1本程度の設定がなされ、ほとんど待つことなく乗車することができます。

 

 

 

 

 

トラムを見てみましょう。主に緑の車体です。江ノ電に似たデザインですね。バリアフリーに気を遣い、段々と低床車両に置き換えられ、階段を要する車両は減少しているようです。各路線とも10分に1本程度運転されており、路線の被る部分もあるため、中心部内であれば、見かけの本数はより多くなります。

 

 

 

そして地下鉄。世界最北の地下鉄ですが、鮮やかなオレンジの車体です。中心部では路線はかぶりますが、2系統存在し、ラッシュ時には、片方が5分に1本、もう片方が2分半に1本。昼間でも片方が7分半に1本、もう片方が4分に1本と走っており、中心部での見かけの本数は、とても多くなっています。

 

 

 

最後にフェリーですが、世界遺産であるスオメリンナ要塞のある島に向かうものが、20分ないし30分に1本運行されています。観光地でありますが、この島にも住民がおり、生活の足ともなっているようです。冬季、海の凍っている期間は、航路の部分だけ氷を砕いておき、進めるようになっています。

 

 

 

ヘルシンキの公共交通機関の使いやすさ

それでは、これらの交通機関が単一の組織によって運営されていることのメリットを見ていきましょう。

 

まず、案内のわかりやすさ。駅、停留所、バス停などでの案内を見ると、この通り、交通機関ごとにアイコンがあり、近郊列車は紫、バスは青、トラムは緑、地下鉄はオレンジというように車体と同じ色分けがなされています。実際の車両の視覚情報と結びつき、どこで何に乗り換えができるのかが一目でわかるのです。

 

 

 

 

 

次に運賃の統一。冒頭で述べた通り、ヘルシンキの公共交通機関の1日券などは、交通機関ごとではなく、近郊列車、バス、トラム、地下鉄、フェリーの5つに乗ることができます。さらに、定期券のような年間パスもあり、住民であれば、それを購入しておけば、その日の行先や天候、気分に合わせて、交通機関を選ぶことができます。日本の、ルートの指定された定期券と異なり、定期券のルートに合わせて遠回りなどということもする必要はありません。

さらに1回券でも、乗車から80分以内であれば他の交通機関へ乗り換えが出来ることとなっています。このチケットは、スマホのアプリから購入することができ、券売機や、バス車内で購入するよりも安い値段です。(例えば、上記と同じRegion two-zone内については、アプリからならば4.2€、券売機では5€、バス車内では5.5€(2018年3月現在))

ちなみにこのアプリはオープンソースです。そのうち、世界中の乗車券を同じアプリから購入できる日が来るかもしれませんね。

 

ちなみに、子供の乗ったベビーカーを押している親は運賃が無料です。子供を育てやすいことでしょう!(画像はフェリーの運賃案内です。)

 

 

 

 

そしてなんといっても、待ち時間の少なさ。これは単一の組織の運営によるメリットではありませんが、特にバス、トラム、地下鉄はかなりの高頻度で運転されています。このため、バス停、停留所、駅での待ち時間は数分程度に抑えられます。

座席が埋まりきることなどはなく、どんなに混んでいても席に座ることはできるくらいです。

 

公共交通機関における乗り継ぎシステムにおいて求められる4つの連続というものがあります。物理的な連続(乗り継ぎの移動距離を少なくすること)、心理的な連続(案内を統一し、わかりやすくすること)、運賃支払いの面での連続(乗り継ぐ際に切符の購入がその都度必要であること、初乗りが毎回かかることを防ぐこと)、時間的な連続(乗り継ぎの待ち時間を減少すること)です。物理的な連続については、バスの停留所とトラムの停留所が並んでいるところがあったりする程度ですが、その他の3つはクリアできていると言えるでしょう。

 

さらに、筆者は冬に訪れたために利用できませんでしたが、春以降は1日券などでシェアサイクルも利用することができます。自転車用のバイパスなどもあり、自転車の利用促進も行われています。

 

 

 

公共交通機関に対する考え方

HSLは住民にいかに公共交通機関を利用してもらうかを突き詰めているように思われます。乗客のニーズに合わせ、スムーズで信頼性の高い交通手段を提供することで、CO2などの排出を減らすこと、コンパクトな都市構造をつくり、地域をより魅力的にすること、公共交通機関、自転車、歩行という交通手段の利用を増やすことなどを実現することを考えています。

日本感覚ではガラガラの状態で走らせており、これは極端な例かもしれませんが、ここまでなされれば、公共交通機関の利用は進みます。2017年の予算を見ると、HSLが地方自治体から受けている拠出金はHSLの収入のうち46.5%を占めており、このような状態でも運行が可能となっているのは、このような公的負担が行われていることが大きいでしょう。

環境への配慮、車の運転できない人の足となること、歩行などが少し増えて、健康を増すこと、そのような直接的にお金という数字に表れない部分を考えて、公共交通機関を考え直すことも必要なのではないでしょうか?

日本でもこのような策を実現するには、大きな公的負担が必要となります。視野を広げれば、どのような都市空間としていくかまで考慮し、いかなる公共交通施策を取るかの議論が必要と思われます。

 

HSLのHPはこちら HSLの目指すことなどの紹介はこちら(どちらも英語)